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僕は明日昨日のきみとデートする 七月隆文著作

物凄い人気の小説ですね「僕は明日昨日のきみとデートする」タイトル見たとき、ん、どういう事?と思いましたが、なるほどそういいう設定なんだぁと思わず関心と共にもし私がそうだったら、どうするんだろうと考えさせられるところもありましたね。

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

 

 

 この作品を読了したのがおよそ1年前の事。

そして昨年の暮れに映画もみさせていただきました。

なぜ今になって「ぼく明日」の記事を書こうとしたのか?…

それはふと思い出すあの新鮮さを今一度感じたかったからかもしれません。

 

 

昨年の8月初旬私はあの暑い最中病院のベットの上で時間を過ごしていました。

昨年の7月末の頃、体調不良で仕事を早退して少し休んでいました。

この暑さのせいで夏バテをしたものだと思っていましたが、一向に良くならず終いには自宅で倒れ病院へ、そして緊急入院という流れでした。

物凄く体が怠くめまいがし、息苦しい状態でした。

検査の結果「甲状腺機能亢進症」いわゆる「バセドウ病」という病気でした。

それからおよそ12に日間にわたり入院。

入院の数日は絶対安静……「甲状腺クリーゼ」を発症していたそうです。

あと1週間ほど遅ければ………

幸いなことにまだ軽度の状態でもあり心不全等は傾向がみられるが治療をすることで落ち着く範囲内であったそうです。

甲状腺の病気「バセドウ病」は処置さえしっかりとしていれば普段の生活には支障なく過ごせます。ただ、薬「投薬」治療の場合は非常に長い間その薬を服用しなければなりません。少なくとも2,3年は飲み続けなければいけませんし、月に1回程度の通院で血液検査をしなければなりません。

まさかそんな病気に自分がなるとは思いにもよらかったです。

今も薬は欠かさず服用しています。

検査の数値も平常値を保っています。お薬の力なんでしょうね。

でもこの1年間私は以前のように体が思うように動きません。甲状腺の数値が安定していてもなぜか物凄くだるくなります。そして集中力も以前からするとかなり落ちました。

精神的なものではあるとは思いますが、よく倒れ込むように横になっていることが多くなったのは事実です。

 

さて、かなり脱線してしまいましたが、私がこの「僕は明日昨日のきみとデートする」と出会ったのはまさにこの病気で入院する直前でした。

本屋さんですでに購入はしてあったものの読まずにいた本でした(正直購入してから放置してある本は今もありますけど・・・)

体調はあまりよくありませんでしたけど、時間をつぶすのと気分転換になると思い読み始めた次第です。

 

なぜこの本を選んだのか?

まずタイトルが意味深だとは思いませんか?

明日、昨日の君とデートする?思わず「ん!」と首を傾げました。ふと、あーよくあるSF系のものなんじゃないかという思いもありましたが、それにしてもカバーのイラストは恋愛風特有のイメージ……

しかも今一番人気というコメント……

気になるなら読んでみようと思い購入した次第です。

さてさて、あの体調の悪い中私はこの物語を読み始めてしまいました。

正直に「読み始めてしまいました」といいます。

序盤は「あー関西方面が舞台なんだ」そしてああ、ここは京都なんだとその電車の路線を思い出しながら読んでいきます。

そこで、偶然に主人公「南山高寿」の目に入ったヒロイン「福寿愛美」へその電車の中で一目惚れをしてしまうのが始まりです。

そう始まりはよくある恋愛パターンの描写です。

一目惚れ、そして意外にもその日すぐに二人はお互い自己紹介まで済ませてしまいます。まぁそういう即決的な展開もありだと思いながら読んでいましたけど……

でも実は後で知る事ですけどこの始まりがこの物語の終わりでもあったんです。

まぁ、このあとは多少ネタバレもありますのでご了承ください。

 

 描写の中で主人公の高寿の性格はどちらかというとおくての引っ込み思案タイプという表現がいいかもしれません。

それでも高寿の親友であり幼馴染の「上山」という存在があるからこそ、何とかこの2人が展開してくるようになると言うのもよくあるパターかもしれません。

おくての主人公がやり手の友人からアドバイスをもらいデートにこぎつける。普通にみれば何ら変哲もないドラマ仕立ての様な内容です。

しかし、この物語にはある秘密が隠されていました。

それが…時間のさかさま関係。

まさにこの発想は斬新だと思いました。しかもそれをラブストリーに仕立て上げるとは…

中盤まではこの時間のさかさま関係は表面にあまり出てきません。

後半になるにつれ二人の関係自体が限られたものであると言う悲壮感にさいなまれる高寿の心情が描写されます。

それと並行して、愛美自体はすでに愛美自体から見れば昨日…つまり前日いやその前から高寿と何をしたかを知っている状態にあると言う事。そして愛美自体も高寿といられる時間が限られたものであると言う事をすでに知っているんです。

ちょっとややこしいかもしれませんが、この二人の時間の流れはまったくの正反対なのです。

正反対……それは高寿を基準とすれば、明日がやってくると言う表現が出来ますけど、愛美側からすれば高寿の昨日がやってくる。

愛美の明日は高寿の昨日。

つまり高寿とはすでに昨日こんなことをしたと言う事を愛美は知りながら、明日の高寿と付き合うんです。

それも初めはそのことを覚られない様に注意をしながら…

もしこんなことが本当に現実的あるのなら、愛美は物凄く強い女性(気持ち的に)だと思います。

中盤以降本格的に恋人同士として付き合う二人ですが、ある事から高寿は愛美の秘密を知ってしまいます。

またそこから、大きく流れが変わっていきます。

始めは愛美のその態度というかすべてを知っていて自分たちが明日何をしたかを知っていながら知らないふりをしていたことに愕然となります。ただ、騙されていたようなそんな疑心簡に陥ります。

でも、ある時高寿は思いました。

愛美はよく涙を流します。その涙は高寿の何気ない言葉「また明日」という言葉なんです。そう愛美にはもう高寿の言う明日は来ないんです。

愛美にとっての明日は高寿にとっては昨日なのだから…

高寿は気付きます。愛美がどれだけ苦しんでいるのかを……そして自分が何気なく言っていた「また明日」という言葉が彼女をどれだけ悲しませていたのかを……

 

後半最後…高寿と愛美は別れます。でもそれは愛美とって初めてこの時代の高寿と出会った日でもあるんです。

つまり愛美はこれから高寿の関係をきずき上げることになるんです。

 

別の世界から来た愛美。でも高寿はこの世界の人間。二人の違いは…ただ時間が逆転しているだけ。

たったそれだけの事……でもそれは今の私たちの世界では現実にはありえない事かもしれないけれど……もし、これが私だったら私は愛美のように強くなれるんだろうか?

 

時間がすれ違う二人でもその気持ちはしっかりと結ばれている。

 

もし道端ですれ違う人々と私は逆の時間を過ごすとしたら……それでも想う人の前に出て行けるのか……数日間ただ病室の白い天井を眺めながらそんな事をおよそ一年前考えていたのを思い起こします。

 

「僕は明日昨日の君とデートする」七月隆文著作:反響が口コミで大きい作品ですのですでにお読みなった方も多くいらっしゃると思います。

でもまだしたら、そしてご興味がありましたら一度この不思議でいて、とても切ない世界に浸ってみてください。

 

 

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