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対岸の彼女 角田光代著作

直木賞作家の角田光代先生著作対岸の彼女」を読みました。

 

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

 

 

 こちらの「対岸の彼女」はあの直木賞を受賞された作品です。

初版は2004年と今から12年の歳月が流れています。

 とは言っても、何か新鮮さを感じさせる内容でした。

 

 

「大人になれば自分で何かを選べるの?」

帯びに書かれていた言葉。

登場する人物「小夜子」「葵」そして「ナナコ」

この物語の中心となるのは「葵」

葵を中心にして大人になった自分と、高校生になった自分の両方を描写しています。

中学時代に苦い想いをした葵は、家族と共に新天地へ引っ越しをしてきます。

そこは今まで居た都会とは違う田舎町。

大都会で暮らしていた葵とその両親。この地に来て葵は新たな自分を作ろうとします。

いわば自分を変えたかったのかもしれない。でも実際は、自分はそんなに変わることは出来なかった。

新しい土地での新しい環境の高校への入学。そして「ナナコ」と言う少女と親しくなります。

自分は都会にいた時に味わった「いじめ」に対してどうして自分がそんなことにならないといけないのかと悩みます。

そしてこの地の高校で出会ったナナコの生き方を不思議に思いながらも、なんで彼女はあんな風に自由にいられるんだろうかと疑問を抱きながら、ナナコに惹かれていきます。

この物語は葵の高校時代と、大学を卒業して葵が始めた会社に入社した小夜子との関係を一篇づつ書かれています。

葵は大学を卒業して、どこにも就職をすることなく始めた事業。いわゆる旅行会社と言うものでした。業績もの小さいながらもそこそこ廻っている経営状態の中、代表である葵は新事業を打ち出します。

その新事業に向けた求人に小夜子は応募をして、面接の時葵は小夜子を一発で好感を持ち採用をします。

小夜子は小さい子を持つ一時の母。育児雑誌やいろんな情報をかき集め必死に一人娘を育てたい。そう心の中で思っていました。

公園デビュー」よく聞きますよね。まさしくその公園デビューで思い通りに行かず、あちこちの公園をめぐる生活をします。

その時小夜子は「どうして?」なぜうまくいかないんだろう。

そんなことをいつも気にしていました。でもその思いは実は、小夜子が結婚する前に勤めていた会社の人間関係が尾を引いていました。

「あの人とこの人。あのグループ、このグループ」よくある仲間と言うか近寄った考えを持つ人たちの集まり、つまりグループですね。そこで起きるいざこざや対人関係がとても小夜子にとって苦に感じていたようです。

 

そして高校時代の葵もまさにその事で苦しい想いをしていました。

いじめと言うのは、あるグループの数人が目を付けた一人をからかい気分でいじめる。

始めは小さな事かもしれなかったことが積もり時間と共にエスカレートしていく。

そして、ほんの数人からクラス全体へと伝染するようになる。

葵は中学時代このいじめの対象としてクラスから疎外されていました。でも新しい地での高校でも実際、葵本人にはあまりひどいいじめはなかったにせよ、確かに集団でのクラスいじめは発生してしまいます。

そんな中、葵は自分を守ろうと必然的にまとまったグループに俗し、目立つことも、前に出ることもなく、ただ自分は関係ないと言う立場を取ります。

でも、友達となったナナコはちょっと違っています。

特に自分から何かをやって目立とうとするわけではありませんが、どこのグループにも入らず、それでいていろんなグループの生徒と話をしたり親しげにどこでも同じように接しています。

それがナナコだと言えばそうかもしれませんが、実際ナナコ自身の家庭環境はとても悲惨な環境下にあったのです。

でもナナコは「そんなの気にしないから」と一切人のうわさ話や自分に対する中傷など何もなかったかのように生きています。

葵はそんな奈々子の生き方に少しづつ何かを感じ始めます。

「自分は何を恐れているんだろうか」と。

小夜子は葵の元で働くことを決めました。でもその仕事は、旅行会社の仕事では無く「お掃除屋さん」でした。

葵が新規に始めた事業は「お掃除屋さん」です。

始めはあっけにとられたような感じの小夜子でしたが、次第にこの仕事が好きになります。

そして小夜子の気持ちにも変化が現れます。

自分の娘をちゃんと私がしっかりと見守ってあげないと「あの子が可愛そう」どうしたら自分がいいえ、自分の耳に入ってくる情報通りにならないんだろうと言う気持ちが変わってきます。

「うまくいかないのは……だから」自分が持つイメージと現実は違いますでも、それを現実の様に感じていくには、まず自分が変わらなければいけないと言う事に気が付いてきます。

葵との出会いによって小夜子は、葵の生き方に段々と惹かれていきます。

でもそれは今まで自分が抑え込まれていた自由と言う言葉が、葵と接するたびに感じていたからです。でもそれは始めの内だけでした。

小夜子が自分を、自分と言うものを自分で見直した時、あることにはっきりと気づきました。そして葵の生き方に疑問を持つようになります。

小夜子の求める本当の幸せって何だろう。

葵が求めていた幸せって何だろう。

私は大人になって、どう言う生き方を選んだんだろうか?

高校時代、絶対に幸せになろう。例えそれが他人の目から見て不幸のどん底でもあっても自分たちが幸せと感じているのならそれでいい。

大人になって自分が選んだ道って……

選ぶことは大人でしかできないんだろうか?

もしかしたら……

 

女性としての生まれた生涯。どんな人生を女性として生きるか。

家庭を持つ女性の想い。

家庭を持たない女性の想い。

貴方は、どちらに想いを寄せますか?

 

「大人になれば自分で何かを選べるの?」

その答えのヒントがあるように感じました。